1 断層帯の地下構造解明のための反射法地震探査および重力探査
平成17年度 糸魚川−静岡構造線断層帯における重点的調査観測 成果ダイジェスト
 バイブロサイスを用いた反射法地震探査を山梨県南アルプス市から芦安村に
至る12 kmの測線で実施いたしました。
 反射法探査から得られた断層帯の構造断面です。甲府盆地下の基盤及び活断層としての糸魚川―静岡構造線が西傾斜で初めてイメージングされました。

2 断層周辺の不均質構造を解明するための電磁気探査

電位線の施設

電極

コイル(鉛直成分)
測定器(右)とカーバッテリ(左)
データ転送用PC(手前)
市ノ瀬断層

市ノ瀬断層
 市之瀬断層を横断する比抵抗構造断面。断層の西側では、深度約500m-1000m付近に低比抵抗層が顕著に現れました。青色で示した高比抵抗基盤は西側に向かって深くなることもわかりました。

.1 断層帯周辺における自然地震観測(長期機動観測)

 糸魚川−静岡構造線断層帯周辺における長期機動観測点の整備状況です。平成17年度にパイロット重点観測による5観測点を気象庁から防災科学技術研究所に移管いたしました。また、計器深度が50 mの長期機動観測点を新に3点施設いたしました。これら8観測点からのデータと高感度地震観測網(Hi-net)のデータとの併合処理を行えるよう、データ処理システムを整備しました。

 白菱形印で表す8観測点を(a)使用しない場合と(b)使用した場合について、地震波速度構造のチェッカーボード・レゾリューション(解像度)試験をいたしました。
 その結果、(b)では糸魚川−静岡構造線断層帯の中部でもチェッカーボードパターンが良好に復元されております。すなわち、観測点の整備によって、断層帯周辺域のほぼ全域に沿って一様に高い空間分解能を得ることが可能となりました。

.2 断層帯周辺における自然地震観測

    (稠密アレー観測による地震活動及び地殻不均質構造の解明
 観測点分布と、観測期間中の自然地震の分布を示しました。稠密臨時観測点(DAT60点(平成17年9月16日から1222日)と、産業技術総合研究所(AIST8点、定常点(気象庁、Hi-net、大学100点の観測点で収録された波形データを統合いたしました。気象庁一元化震源によって選ばれた610個の地震(平成17年9月1日から1231日)を対象としております。
Line 8に沿ったP波速度分布と糸魚川−静岡構造線断層帯との関係。甲府盆地下の基盤が西下がりになっている。ISTL: 糸魚川−静岡構造線断層帯。MTL:中央構造線。

.3 断層帯周辺における自然地震観測

    (稠密アレー観測による微小地震のメカニズム、応力解析
地震観測点と解析した地震の震央分布
 メカニズム解の分布。赤色は横ずれ断層、緑は逆断層、青は正断層タイプを示し、それぞれの成分の比率に応じて色分けしてある。北緯35.8度付近から南の領域においては、その領域の東部の糸静線近傍で逆断層タイプ、西部の中央構造線近傍では横ずれ断層タイプが卓越する。諏訪湖近傍の地震は、横ずれ断層タイプが卓越する。

4 地震時断層挙動(活動区間・変位量分布)の予測精度向上に向けた変動地形調査

糸静線北部(栂池〜松本間)の断層線と地形面

赤線:断層線、青線:変位量計測のための地形測量測線、地形面年代は、H12万年以上、M: 510万年、L112万年(L1a:2万、L1b:1万)、L247千年、L312千年。(最新イベントによる1回の上下変位量が推定された地点、およびその量)

糸静線北部(白馬〜松本区間)の平均変位速度分布(上下方向)。航空写真測量法により既に消滅した変位地形が復元され,総延長60 kmに及ぶ調査領域において500700 m間隔で、垂直変位速度が求められた。
5 より詳しい地震活動履歴解明のための地質学および史料地震学的調査

フロート台船を用いた青木湖でのコアリング風景。約4m長のコア4本を採取し、複数回の混濁流堆積イベントを確認いたしました。

  青木湖湖底から採取したコアの押し出し作業。1万年前以降に堆積したシルト主体の湖底堆積物が採取されました。

コア内にみられる小断層。地下深部からつながる断層の一部、もしくは地震動等を原因とする表層部での側方流動によって生じたと考えられます。

6 強震動評価高精度化のための強震観測・地下構造調査
100 mボーリング掘削中の神田強震観測点 200 mボーリング掘削中の島立強震観測点

松本盆地内の島立観測点 () と断層近傍の神田観測点 ()で記録された加速度波形例。どちらの観測点においても、赤色で示された地中の記録に比べ、青色で示される地表の記録がはるかに増幅しています。